はじめに
会社員として働く上で評価は最も大きな関心事の1つでしょう。評価によって自身の職位や給料が決まるのでそれも当然です。
しかしながら、「納得感のある評価を受けられていますか?」と問うと明確にYesと答えられる人は稀でしょう。「成果を出したのに正しく評価されていない」と不満を持っていたり「評価は偉い人が勝手に決めるものだから…」と諦めている人もいるのではないでしょうか。少なくとも過去の私はそうでした。
そもそも、評価をどのように受けるべきか指導や研修を受けたことはありますか?私にはその記憶はなく、自身が評価者の立場になって初めて評価というシステムに真剣に向き合うことになりました。
評価の際に被評価者としてできることは、評価者に自分の成果や成長を適切にアピールすることです。そして、アピールの方法として最も確実かつ重要なのは伝わる自己評価を書くことです
このエントリは、被評価者が評価者に正しく成果をアピールし適切に評価されるための自己評価の書き方を筆者の経験に基づいて記述したものです。
特定の職種に限定しない内容にしたつもりですが、筆者の経験上無意識に開発職が前提になっている記載があるかもしれません。その点はご了承ください。
※「前提」パートが長くなってしまったので、結論だけ知りたい方は「本題」パートまで読み飛ばしてください。
前提:評価について知っておくべきこと
本題に入る前に、評価全般についての前提をお伝えします。
3種類の評価軸
人事評価の評価軸は大きく3つに別れます。
- 成果評価
- スキル評価
- コンピテンシー評価
成果評価は、その名の通り自身の所属する部署やチーム・個人が挙げた成果について関するものです。期初に設定した定量的な目標の達成度によって決まることが多いでしょう。
スキル評価は、自身の持つ専門性がどの程度発揮されたか、あるい専門性の幅や深さがどの程度伸びたかを測るものです。資格のように客観的な指標が用いられることもありますが、多くは実際の業務事例をもとに判断されます。
コンピテンシー評価は、成果を出すための行動特性をどの程度取れていたかを評価するものです。バリューやクレドのようなあらかじめ規定された行動指針と実際の行動がどの程度合致していたかを判断されます。
このエントリでは、これら3つの評価のうち評価者と被評価者の間でミスコミュニケーションが起こりやすいスキル評価とコンピテンシー評価の2つに共通する「正しく評価される自己評価の書き方」を説明します。
評価とはコミュニケーション
評価とは、"被評価者と評価者の間のコミュニケーション"です。
冒頭に「成果を出したのに正しく評価されていない」「評価は偉い人が勝手に決めるものだから…」という例を挙げましたが、前者はコミュニケーションがうまくいっていない状態、後者はコミュニケーションが断絶されている状態です。
忘れられがちな前提ですが、評価は人対人で行われるコミュニケーションの1種です。
被評価者と評価者の間でお互いの立場・考えを理解し合い言語によって意思疎通を行う行為です。したがって、お互いにとってスムーズなコミュニケーションをとるためには評価者が被評価者を理解するのと同じように、被評価者も評価者を理解する必要があります。
評価者の考えを知る
では、評価者はどのような考えで評価を決定しているのでしょうか。
評価者の評価スキルによって一定のばらつきはありますが、評価者は評価基準に沿って評価を決定しています。
alu.jp(当たり前のことを言うなと怒られそうですが、どうか続きを読んでください。。。)
皆さんの会社にもおそらく評価基準があるはずです*1。等級や職位によって評価基準(もしくは昇進条件)が決まっているケースがほとんどだと思います。
評価者は、被評価者の行動やそれによって生まれた成果を評価基準と照らし合わせた上で基準を超えていればプラスの評価をしますし、達していなければマイナスの評価をします。プラス評価の場合、昇格基準と照らし合わせて昇格の判断を行います。
この当たり前の事実を理解したうえで自己評価を書くのとそうでないのとでは、同じ成果を挙げていたとしても評価結果が異なります。
本題:正しく評価される自己評価の書き方
前提が長くなってしまいましたが、ここからは本エントリの本題である「正しく評価される自己評価の書き方」について説明します。
ポイントは以下の3つで、それぞれ説明します。
- 書いたことしか評価されないと思え
- 加点アピールは具体例・エビデンス・主張を書け
- 日頃から書き溜めておけ
書いたことしか評価されないと思え
よくある勘違いとして「評価者は日頃から自分のことをよく見てくれているはずだしどんなタスクをやっているか把握しているはずだ」というのがあります。
しかし残念ながら、あなたが思うほど評価者はあなたやあなたの成果を把握していません。
あなたにとって評価者は1人しかいませんが、評価者はあなた以外の多くの被評価者を抱えています。あなたにかけられるリソースは限定的なのです。
そういった状況の中で適切に評価されるためには、自己評価のドキュメントの中で成果を自分でアピールするしかありません。「書かなくてもいい感じにくみとって評価してくれるだろう」という幻想は捨てましょう。
「評価者の考えを知る」セクションで書いたように、評価者はあなたの行動やそれによって生まれた成果を評価基準と照らし合わせて評価を決定します。そのため、あなたが自己評価で「何を」「どのように」書いたかで評価結果は大きく変わります。
私の経験上、自己評価に書いた内容が多すぎて正しく評価されない人よりも、少なすぎて正しく評価されない人の方が圧倒的に多いです。これは非常にもったいないことです。
このセクションの結論として、自己評価を書く際には下記の2点を意識しましょう。
- 書いたこと以外では評価されないつもりで手を抜かないこと
- 自分ではたいした成果・行動でないと思うものでも迷わず書くこと
加点アピールは具体例・エビデンス・主張を書け
先のセクションでは加点要素となりえるものは迷わず書け、とお伝えしましたがどのように書くと評価者に正しく伝わるのか説明します。
ここではメルカリ社が公開しているエンジニア向けの評価基準 Engineering Ladder を例として使います。
Engineering Ladderでは等級MG1〜MG6で共通する6つの評価軸を持ち、等級によって求められる基準と前等級との差分が明示されています。
評価軸の1つにTeamworkがあり、MG1とMG2ではそれぞれ下記のように定義されています(太字は前等級との差分)。
- MG1: 称賛やフィードバックを丁寧に行うことの有用性を理解し、説明できる。
- MG2: 称賛や建設的なフィードバックを行う方法を理解し、実践している。
MG1等級の被評価者AさんがTeamworkのアピールとしてこのような自己評価を書いたとします。
この自己評価のよくない部分は3つです。
- 「意識的に」という客観的に観測できない形で自身のふるまいを表現しており評価者が評価できない
- 具体例がないのでフィードバックが丁寧かどうか評価者が判断できない
- 現等級の基準を満たしていることを主張したいのか次等級の基準も満たしているのかわからないため低く評価されるリスクがある
この自己評価を改善するとこうなります。
また、XさんがA案件で作成したドキュメントについて改善ポイントがあったので、意図が正しく伝わるよう留意したコメントをしました(コメントへのリンクを貼る)。
これらの行動は次等級の「称賛や建設的なフィードバックを行う方法を理解し、実践している」を満たしていると考えます。
この改善を行う際に利用した、加点アピールをする上で重要なポイントは3つです。
主観と事実を使い分ける
エピソードを書く際には「注意した」「心がけた」のような他者が観測できない主観的な表現は避け、代わりに「誤字をなくすためにGoogle Docsの校正機能をつかってチェックした」「Slackのリマインダーをセットして忘れないようにした」のように事実を用いて評価者が認識・観測できる形で書くことが大事です。
一方で、事実を補足する目的で主観的な表現を利用することは効果的です。
先の改善後の自己評価では「Xさんは新卒ということもあり自分がチームに貢献できているか不安がっているので、成果の報告時には常に大げさなくらい称賛するようにしていました」とあえて主観的な表現を利用しています。これは、評価者に「自分はTeamworkという評価軸が設定されている意図を理解しており、今回の事例だけでなく今後も再現性を持って実践できますよ」ということをアピールしています。
評価者は評価を行う際に「今回の成果が偶然のラッキーパンチだったのか、それとも再現性のあるものなのか」を判断しています。再現性があるかどうかは事例が複数回あることでも示せますが、成果を出すための行動を意図して行ったことを示すのも効果的です。
エビデンスを示す
エピソードを書く際には、それを裏付けるエビデンスをできる限り提示しましょう。ドキュメントやチャットのリンク、売上等の数値、自身の行動回数を集計した結果などが利用できます。エビデンスによって主張の客観性が高まり評価者の納得感が格段に高まります。
評価者と被評価者が共通で認識している事実だとしてもエビデンスを提示するほうがよいでしょう。なぜなら評価確定までのプロセスに評価者以外のメンバー(役員等)が含まれる場合、評価者が彼らに評価根拠の説明を行う必要があり、エビデンスがないと「それは本人とあなたの主観では?」と疑われてしまう可能性があるからです。
加点の大きさを主張する
そのエピソードでどの程度の加点を主張したいのかを明確に示すことで、過小評価されるリスクを減らすことができます。
具体的な主張の仕方は評価システムに依存しますが、等級をちょうど満たすラインが100点満点中60点だった場合に自己評価として80点を主張するのか100点を主張するのかは明確にしておきましょう。
もちろん、その主張をする根拠として評価基準を示すことが必要です。
日頃から書き溜めておけ
評価者があなたの成果を正確に把握していないように、あなた自身もあなたの成果を全て把握し切れていません。特に昔のことはどんどん忘れていきます。
例えば評価対象期間が4月〜9月だった場合、自己評価を書く9月末に4月の成果を思い出そうとしても忘れてしまっていることがあるでしょう。
また、認知バイアスの一種として直近効果(直近バイアス)があり、評価者は評価タイミングの直近の事象に引きずられて評価してしまう傾向が知られています。
せっかく4月や5月に良い成果を挙げていても自己評価を通じてアピールしないと適切に評価されない可能性があり、これは非常にもったいないことです。
こういった悲劇を防ぐために、日頃からこまめに自己評価を書き溜めておくことをおすすめします。
同僚から感謝のメッセージをもらったときやプロジェクトが落ち着いたタイミングなど、雑なメモ書きでよいので手元のドキュメントを更新するクセをつけておくとよいでしょう。
おわりに
このエントリでは正しく評価されるために被評価者目線でできることに絞って書きましたが、本文中でも触れたように評価とは"被評価者と評価者の間のコミュニケーション"です。
評価や目標設定については、評価時期だけでなく日常的な会話の中で継続的に評価者とコミュニケーションを取ることが大事だと思っています。
評価者の一人として、このエントリが評価者⇔被評価者間のコミュニケーション円滑化に少しでも役に立ってくれたら嬉しいです。